水曜日, 7月 08, 2015

イノベーションの中心点は、シリコンバレーから深センへ その(1)

水曜日, 7月 08, 2015 By

6月20日,21日に開催されたMaker Faire 2015 Shenzenと、ニコ技シンセン深圳観察会に参加するために、十数年ぶりに深センにいってきた。

図) 南山区のソフトウェアパーク

日本がモバイル全盛期の頃、中国でもケータイJavaビジネスが始まると聞きつけ、頻繁に深センに行っていた。当時の中国のモバイルビジネスは、広州中国移動が、まず新しいサービスの実験場となるために、広州や深センエリアにモバイルベンチャーが集結していた。

当時の深センは、オンラインゲームや、モバイルベンチャーが集結していたものの、街は結構殺伐としていて、深セン駅の前では、強盗団が堂々と活動しているような、かなり危険な臭いのする街だった。結局、自分も強盗団にやられ、パスポートを持って行かれ、中国からしばらくの間でれなくなった苦い思い出がある。今回の深セン訪問はその時以来になる。

深セン市は、珠江デルタの一部になる。珠江デルタは、深セン市(GDP約30兆円)、広州市(GDP約30兆円)、東莞市(GDP約10兆円)、香港(GDP約30兆円)などから構成され、エリアGDPでは、100兆円を突破する経済規模を誇っている。珠江デルタ発展計画で2020年までにGDPが2兆6000億ドルを目標にしている。


深セン市は、広州と香港の中間に位置し、35年前は小さな漁村だったのが、今や人口が1100万人を超え、GDP規模も30兆円を超える規模になっている。街並みには、超高層ビルが立ち並び、日本車がたくさん走っている。5台に1台ぐらいは日本車という比率といったところだ。Uberを7回近く使ったが、そのうち4回が日本車が迎えに来たので、新しモノ好きな人は日本車を好んで乗っているようだった。

図)  深センと香港の国境付近(香港側)
深センも35年前はこんな感じだった


図)  現在の深セン(高層ビルが立ち並ぶ)

また、街中を走る自転車は、ほとんどが電気自転車だ。旧来型の自転車にモーターをつけたものや、バイクを改造し電気自転車に改造したものが街中を走っていた。深センでは、足こぎの自転車を見かけることはほとんどなくなっていた。足こぎの自転車は、健康志向の人が乗るようなものになっていた。

図)  誰もが電気自転車に乗っている

図) 電気自転車は歩道も走れる

このように、急速に近代化した深センだが、最近は、人件費、不動産の高騰が問題になってきている。特に不動産は、まさにバブルだ。かつての東京のように、不動産価格がありえない額につりあがっている。

図) 南山区のマンションの価格

上記の写真は、深セン市で売られているマンションだ。日本円に直すと、価格帯は以下のようになる。

  • 157平米(47.49 坪)で、1200万元(2億2800万円)
  • 99平米(29.95 坪)で、510万元(9690万円)
  • 88平米(26.62 坪)で、410万元(7790万円)
  • 65平米(19.66 坪)で、350万元(6650万円)
  • 50平米(15.13 坪)で、180 万元(3420万円)
  • 75平米(22.69 坪)で、300万元(5700万円)
  • 131平米(39.63 坪)で、600万元(1億1400万円)
  • 69平米(20.87坪)で、300万元(5700万円)
  • 38平米(11.5坪)で、160万元(3040万円)
  • 62平米(18.76坪)で、280万元(5320万円)

50坪で2億円を超える額に高騰している。賃貸では、中心街では、1LDKで8万円ぐらい、3LDKで20万円ぐらいの価格帯になっている。

図) 市内は、いまだに高層ビルの建築が続く

また、深センは、中国で最も最低賃金が高いエリアになっている。深センの2015年の最低月給は、2030元(38,570円, 1元19円で計算)になっている。中国では、生まれた場所で、都市戸籍と農村戸籍に分かれる。農村戸籍では、 深センなどの都市に住もうとおもっても、都市での十分な福利厚生が受けれない。例えば、農村戸籍の夫婦に子供ができても、都市で小学校に通わせるには、自腹で費用を負担しないといけないなど、いろいろな制約がある。2030元(38,570円)は、農村戸籍で都市に出稼ぎに来る労働者の最低賃金でもある。出稼ぎ労働者は、1年契約で、工場や建築現場などの作業者になる。また、中国では住まいも雇用側が用意するため、2030元(38,570円) + 住居費となり、実際には1人あたり、5万円〜6万円ぐらいのコストになる。そして、その人件費は年に12%程度の勢いで高騰している。深センでの、工場の撤退や移転は、こういったコスト構造の変化が背景にある。今のペースでいけば、いずれ日本の地方ともあまり変わらない人件費になってくる。

図) 工場の作業風景

また、これはブルーカラーの話で、都市戸籍をもち大学を卒業したホワイトカラーは、さらに給料水準が高くなる。ホワイトカラーの給与水準は、日本と比較しても同水準のレベルにきている。

図) オフィスワークの作業風景

不動産や株価バブルと、人件費高騰という背景から、深センでは、年々コスト高になってきており、今までと同じビジネスが成立しにくくなってきている。実際、3年前ぐらいが深センのハードウェア製造のピークであり、まさに生き残りをかけた構造転換が急務になりつつある。

その(2)へ続く


イノベーションの中心点は、シリコンバレーから深センへ その(3)
イノベーションの中心点は、シリコンバレーから深センへ その(2)

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